2007年 12月 29日
おそい人

おととい、ポレポレ東中野で上映中の映画「おそい人」(http://osoihito.jp/)を見た。
重度身体障害者の主人公が連続殺人を犯すという内容で、2004年には完成したものの、自粛意識の強い日本ではどの配給会社にも受け入れてもらえず、マスコミも全く扱ってくれなかった、正に「黙殺」されていた映画。その後、いろいろな国の映画祭に招聘され、ポレポレの協力もありようやく国内での上映に至ったということらしい。
今月初めにたまたま朝日新聞を見て(唯一取り上げたのが朝日だったとか)、その当日のトークショーに興味を持った。
単純に話題性だけなら行かなかったと思うんだけど、何か気になるものがあって、ネットで予告編を見て、センスの良さにこれは見に行っとこうと出かけた。

トークショーにはいろいろな人が集まってきていて、表現者だけでなく、すべての「中心から少しだけ外れた人」にとって致命的な「黙殺」というものにまで話題が至って、かなり面白かったんだけど、長くなるのでとりあえず映画の話。トークショーの帰りに配られた割引券で、映画を見て来た。

簡単に書くと、前半がとても良く、それだけに後半が惜しかった。
前半、最初の殺人を犯すあたりまでは、登場人物の魅力が良く出ていて、ちょっとした笑いを含んだやり取りなど、ドキュメンタリー的なリアリティを持ちつつ話が進み、それだけでも充分面白い。
人物の魅力があるだけに、最初の殺人のシーンでは、軽い疑問がありつつもどんよりとしたショックを受ける。
しかしそれ以降、だんだんリアリティが薄れて、次の殺人に至るあたりでは完全なファンタジーになってしまう。

これは、あるいは見易くするための狙いなのかもしれないとも思ったけど、そうだとしたらちょっとやりすぎな気がする。
トークショーの時プロデューサーの人が、本当はかなり長時間の作品だったが上映時間の問題も含め、見易いようにかなりカットしたと言っていたが、はたしてそのためなのかどうか。
確かに重苦しくなり過ぎることを回避できた感はあるけど、別の言い方をすると、後半以降の話の進め方が雑になったように感じてしまった。

とはいえ、映画全体としてはお勧めの作品だった。それは、カメラワークもカット割りも音楽も洗練されている、ということに加え、身体障害をひとつの「特徴」として捕らえることができるものになっているから。
たとえば同じようなストーリーで、身体障害のない人物が主人公だったら、どうということのない、ちょっと作り方は上手だけど面白くない映画になったかもしれない。
もちろんストーリー自体が身体障害者でなければ成り立たないものではあるけど、主演の住田雅清という役者さんの、身体障害までをひとつの特徴としたキャラクターが、映画を支えていると思った。
だから、同じスタッフでの次回作が見たいなあ。

ちなみに、きのうはビデオで録っておいた映画「半落ち」を見て、クオリティの高さに圧倒された。
原作は直木賞の最終選考時に致命的欠点があると指摘されたらしい(重要な部分で現実にありえないことが語られているらしい)けど、ストーリーの展開、キャラクターの設定などものすごく練られている。
登場人物が多いので、映画では展開が速すぎて感情移入しきれない部分もあるけど、さすがだなあという感じ。役者もうまい人が揃っていた。面白かった。
と、ネタバレしちゃいそうなので、もしもこれから見る人がいたら悪いからこのへんにしとこ。
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by miura1go | 2007-12-29 16:05


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